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「古道具中野商店」



「古道具中野商店」

 川上弘美著

 









骨董やアンティークじゃなくて、古道具。
ちゃぶ台とか、灰皿とか、あとはよくわからん置物とか、店内に所狭しとごちゃごちゃ積んであるような小さな古道具屋、それが中野商店です。
マイペースな店主の中野さんと、姉のマサヨさんテキパキとしたかっこいい女性、アルバイトのタケオは何を考えているかわからなくて、同じくアルバイトのわたしヒトミは毎日彼らに振り回されています。

まず中野さん、実は愛人がおりまして、しかも開店時間中に、「銀行行ってくる」とか嘘ついて会いに行く、アルバイトのわたしにもバレバレなんですけどね。
商売もマイペースやけど、恋愛の方も随分マイペース、というか、だめだめ。
一方マサヨさんにも彼がおりまして、「ヒトミちゃん、オトコはね・・」といった感じで、恋愛についてサバサバと語ったりもする。
50代とのことですが、ちらりと乙女な一面も。
中野さんとマサヨさん姉弟、お互いの恋愛に干渉はしないけど、気になってしゃーなくってもぞもぞした感じが、二人ともほんとかわいいんです。

そしてタケオとヒトミは実は付き合っておるのです。
んー、付き合っているって言えるんやろうか、っていうくらい警戒し合ってるし、こちらももぞもぞ・・って感じなんですが。
バイト帰りに家まで送ったのに、家寄っていけばいいのにー、とか。
つまらんことで喧嘩して、つまらん冷戦状態が続く、とか。
読んでるこっちまで、もぞもぞしちゃうわ。

まとめると全体的にもぞもぞしたお話なんですけど、川上弘美独特の空気感のまま、最後までもぞもぞ・・
なんですが、最後には、中野商店に集まったこの四人が、年齢も性別も立場も違うけれど、信頼し合って働いてたんやなーと思えました。
ストーブにあたってうとうとしてたら、ストーブからボッと音がして目覚めた、みたいなあたたかくて気持ちいい終わり方でした。

この物語に出てくる女性は、みなしゃきしゃきしていてかっこええのに、男性は中野さん筆頭にお客さんまで、なんかつかみどころのない変人ばっかりなんですよね。
古道具売りとか骨董の世界って、そんな人が多いんやろか。
解説に書いてあったんですが、川上さんの弟さんは実際に古物商を営んでおられるとのこと。
そして解説も、古道具屋をしている長嶋さんて方が書いていて、興味深いものでしたよ。
by sabazaki-jaco | 2010-04-27 04:14 | ほん