「人間小唄」 町田康著 ●●●●● 作家界に短歌ブームの波が来ているんやないかと思われる、今日この頃。 町田康作、短歌を題材にした、(いつも通り)頭おかしい物語です。 とある作家のもとに送られてきた一通の手紙、中には短歌が書き綴られていた。 その短歌を勝手に引用しまっくって書き上げた小説が大ブレイクし、作家の糺田はほくほく。 短歌を送りつけた小角は怒り、未無という女子と共に、復讐を開始する。 糺田を監禁し、「短歌を作る」「ラーメンと餃子の店を開店し人気店にする」「暗殺」の中から一つを達成すれば良い、ということであるが・・ 町田康の頭ん中はほんま、どうなってるんでしょうね。 虫が湧いてる、なんてもんやない気がする。 でも猫飼ってるからええ人です。 さて、なんやねんこれーと思った文章を抜き出してみました。 “こいつを潰すのは俺の使命。俺の勇気。そして希望。青雲。ラララ、君が見た光。” わからんことはないけど、この繋がり方、普通はそういかないですよね、ていうか小説に書かないですよねこれ。 “「・・インスタントラーメンと本格的なラーメンは違うでしょ」「原理的には同じことだよ。・・人間と猿ほどにも違わない。・・京都人と大阪人ほどにも違わない。せいぜい庄内の奴と園田の奴ほどの違いだよ。」” なんやこの、ごく一部の地域の人間にしかわからん例えは、地名のセレクトがマニアックすぎます。 とかツッコミ入れつつ、こういうのが嬉しくてたまらんのです、町田康ファンとしましては。 糺田も、小角も、未無も、名前なんて読むのかもわからんような変人ばっかなんやけど、憎まれへんのですよね。 拉致監禁してるし、犯罪的行為やりまくってんのに、かわいいって思ってしまうのはなんでなんでしょうか。 発言がコミカルやからかなー。 そして短歌。 まぁ頭のおかしい登場人物が作った、素人がざっくり作った短歌ってことなんですが、しかし町田康の素敵さがにじみ出てにじみ出てしゃーないです。 自分で書いて、自分でぼろくそにけなす。 ってうち、小説の中の登場人物が詠んだ歌やっていうのに、町田康を意識しすぎですね。 どうしても意識しちゃうんやもの町田康、男前。 そんで正直な話、短歌ってごく一部の内容でしかないんですけどね。 どうしても意識しちゃうんやもの短歌、ええし。 NHK短歌にも出てはったし、これを機会に思い切って歌集とか作っちゃってください、是非。 町田康歌集、想像しただけでよだれ出そう。 #
by sabazaki-jaco
| 2010-11-07 02:38
| ほん
「らいほうさんの場所」 東直子著 ●●●●○ インターネットで占いをしている志津は、OLをしている妹の真奈美とちょっと年の離れた弟の俊と、兄弟三人で暮らしている。 家の庭には“らいほうさんの場所”という秘密の場所があり、家族でとても大切にしている。 しかし俊に起こった小さな事件をきっかけに、平穏な暮しが崩れ始める。 一見穏やかな暮しに見えるんですが、志津が異様なまでに大切にしているらいほうさんの場所に、穏やかでない空気感が漂っています。 家族以外には知られてはいけない、家族以外のものを家に入れてはいけない、など。 読み進めていく中で見え隠れする、らいほうさんの場所の秘密。 らいほうさんって何やって話しやし(これは最後にわかりますが) 兄弟三人で住んでいる、らいほうさんの場所を大切にしているなど、変わり者兄弟のように思えますが、ええ、多分変わり者です。 一番謎なのが、俊。 部屋にこもってるし、あんまり喋らないし、かと思ったら子どもみたいに甘えるし。 らいほうさんの場所の秘密も、俊と関係がありそうななさそうな。 ほんで唯一普通なのが、次女の真奈美。 やたらと俊のことをかわいがる姉を「気持ち悪い」と言うし、らいほうさんの場所って何やねんって態度を取るし、普通に会社に働きに出ていますし。 真奈美が普通やからこそ、他の二人の異様さが引き立っています。 あんまり東さんの短歌を読んだことないんであいまい情報ですが・・、という前提で喋りますが、小説の中でこの「らいほうさんの場所」が、一番東さんの短歌の雰囲気に近いような気がしました。 蜃気楼みたいな、イメージ。 志津はシスリー姉さんという名前で、誕生月別の週ごとの占いをやってるんやが、その文章の美しいこと! 小説読みながら、うちまで諭されそうになりました。 シスリー姉さんの占い方も、思いついた言葉から流れるように書くっていう、占いというより想像力やんって感じなのが素敵。 そんなシスリー姉さん、ツイッターをやってはる模様。 こないだ東直子さんご本人がつぶやいてはりました。 http://twitter.com/SisterSisley 気になるなー。 #
by sabazaki-jaco
| 2010-11-03 22:07
| ほん
「赤い髪のミウ」 末吉暁子著 ●●●○○ 沖縄の離島、神高島というところに、留学生を受け入れてくれる施設がある。 クラスでいじめを受け不登校だった小学六年生の航は、その施設に入ることを自分で決めた。 そこにいたのが、島内を自由気ままに駆け回る、赤い髪をした少女ミウ。 航は、ミウや島の人たちから、“神が宿る島”と言われる神高島の言い伝えを聞かされるが、とても信じられない。 しかし航は、次々に不思議な体験をすることになるのだった。 よう知らんのですが、沖縄ってほんまに不思議な神様いてはったりするんですよね。 これは本文にも出てきますが、キジムナーとか。 住んでる人にしたら、神様が住んでるから入ったらあかん森に入らへんのは、当然すぎて何言うてんねんって感じなんでしょう。 でも航にしてみたら、いやいや普通の森ですやん、って思っちゃうわけですよ。 キジムナーて言われても見えへんしー、とか。 東京育ちの都会っ子、多感で繊細な時期の小学六年生の航が、それに反発しちゃうのは、そりゃそうやわなって思います。 うちも理解でけへんし。(スピリチュアルとかもようわからん) そんな混乱を、ええ感じに中和させてくれるのが、ミウです。 もう、ミウ、すてきです。 島の中を、自由にひょいひょいと走り回り、赤い髪が風になびく。 イメージは、聖剣伝説3のケヴィン!(すみません、例がゲームからしか出てきませんでした) あとがきにあったのですが、神高島というのは実際にはなくて、久高島というところがモデルになっているとのこと。 “神と共存する島”だそうです。 この本は児童書なんですが、久高島が気になる方や、スピリチュアルに興味のある方、この本を読んで不思議体験してみるってのもいいかもですよー。 #
by sabazaki-jaco
| 2010-11-02 01:52
| ほん
「ダイオウイカは知らないでしょう」 西加奈子 せきしろ著 ●●●●● 大すきな西加奈子が、大すきな短歌を! もうこれは、夢のコラボレーションです! うちが短歌を始めたもの、きっかけは西加奈子でした。 「ダヴィンチ」の人気コーナー、穂村弘の『短歌ください』の企画で、西加奈子、山崎ナオコーラ、豊島ミホの三人+穂村弘による歌会があったんですが、それ読んでから短歌熱急上昇。 西さんも、その歌会で短歌に興味を持たはったらしいんです。 毎回ゲストを呼んで、西さんとせきしろさんがお題に従って短歌を詠み、あとはあーだこーだと喋って対談形式で。 ゲストも豪華です。 短歌界から穂村弘に東直子に俵万智、西さん仲良しのナオコーラに、せきしろさんつながりで南海キャンディーズの山ちゃん、あとは星野源やらいとうせいこうやらミムラやら光浦靖子やら・・・ 個人的には、華恵ちゃんがたまりませんなーかわええー。 ほんで表紙は見ての通り、100%ORANGEですし。 さてお二人の短歌ですが、こちらも予想を裏切らない素晴らしさです。 上手下手とかそういう問題じゃなく、おもしろい! 西さんはすぐ下ネタみたいなの詠むし、せきしろさんはせきしろワールド全開。 西さんの短歌は西さんの小説みたいやし、せきしろさんの短歌はせきしろさんの本の雰囲気そのまんま出てる。 短歌だけ見ても、どっちが詠んだやつかすぐわかります。 短歌見て作者がわかるって、ええなぁ。 それよりもおもろいのが、喋りですよ、もう漫才みたい。 きっと普段から西さんとせきしろさんは仲いいんやと思うんですが、ゲスト来ても気にすることなく自由に喋るしゃべるべしゃるー。 ちょっとはゲストに気ぃ遣え!って思うくらい。 もうほんで何より声を大にして言いたいのが、これは短歌の本じゃないよってこと!(ていうたら怒られるー?) 短歌って575?季語いるの?興味ないからわかんなーいって人も、是非是非読んだらええって思います、笑えます。 華恵ちゃんがとにかくかわいいので、華恵ちゃんファンは絶対! #
by sabazaki-jaco
| 2010-11-01 02:43
| ほん
「グ、ア、ム」 本谷有希子著 ●●●●○ 超ご無沙汰しております。 ちょいと復活してみようかと思いまして、ええ。 この数ヶ月の空白のことはさっぱり忘れてしまいまして、いつものテンションで書かせていただきまーす。 先週は、本谷有希子ウィークやったんです。 大阪の精華小劇場での「甘え」上映会、さらに映画「乱暴と待機」を見にいってきまして。 「甘え」上映会の後には、本谷さん現れてのトークショーもあり、本谷さんはかわいいのに妄想女子ですてきー!たまらんー! ということで、流れに乗ってみました。 飛び出すように上京したものの、のらりくらりと暮らし、父親からワーキングプア呼ばわりされている長女。 地元でのんびりしたくて堅実な就職を選んだのに大阪勤務、まぁともかく安定が一番と、当たり障りなく暮らしたい次女。 姉妹なのに、はっきり言って、合わない。 父の謎の計らいで、母、姉、妹の三人で行く、二泊三日のグアム旅行!(天候は最悪!) 仲悪いメンバーで海外旅行って、絶対きついですよね。 しかもそれが、家族って。 平気で遅刻する自分勝手な姉にイラッ、どこ行こうか提案するのにやる気のない妹にイラッ。 小さなイラッが、どんどん積もってイライライラー。 極限の緊張状態の冷戦です。 母と父も、忘れたらあきません。 もーオカン何勝手にやってんねん、オトン何しょーもないこと言うてくれてんねん、っていう、悪気がないのはわかるだけに余計に感じる、あのモヤモヤした感覚。 旅行中、姉妹が仲悪いことわかってるけど、一所懸命に明るく振る舞って、ほらアレ食べだの、写真撮るよーだの・・・ オカン、逆に痛々しいよー。 ほんでそれを描くのが絶妙すぎます、本谷さんー。 本谷さん、やっぱり舞台の人だけあって、小説でも台詞がおもしろいです。 イントネーションや声のトーン、どっち向いて喋ってるのかとか、そんなんまで見えるような気がするんですよね。 「グ、ア、ム」は多分、舞台用のお話やないと思うんですが、小説のときも舞台の演出と同じ考え方で書かはるのやろうか。 トークショーのときに、本谷さんが仰った名言。 「毒はともだち」!(毒のある人がお好きなんやてー) この本も、毒のあるいたずらごころで、そらないわー!のまさかの展開が満載ですよ。 #
by sabazaki-jaco
| 2010-10-22 00:21
| ほん
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こんにちは。じゃこです。 本、猫、そして鯖を愛する、永遠の16さい!
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