「麦ふみクーツェ」



「麦ふみクーツェ」

 いしいしんじ著

 









いしいしんじを仰山読んでいる友達に、おすすめを教えてと頼んだらこれをくれました。
「ねこっていう名前で、にゃーって鳴いて声が楽器になる男の子の話やねん」とのこと。

仰る通り、ねこっていう名前で、にゃーって鳴いて声が楽器になる男の子の話でした。
「ねこ」ことぼくは、人よりからだの大きなこども、熱心な数学者の父と、熱心なティンパニ奏者の祖父との三人で、田舎の港町で暮らしていました。
ある朝、トン、タタン、トン、という音で目覚め、音のする屋根裏部屋を覗いてみたところ、それは、小さな農夫、麦ふみクーツェが鳴らす足音でした。
ねこは指揮の勉強をするため港町を出て、愉快で奇妙な人々と出会います。
そして、クーツェの足音に導かれるように、身の回りに潜んでいるたくさんの音を知るのです。

いしいしんじに特段の苦手意識を持っていたんですが、この本で若干解消された、かも。
ていうかわかりました。
外国の小説やと思って挑んだら読めました。
なんかロシアっぽいですよね。
うち、ロシアの小説読んだことないんで知りませんが、温度があまりない感じがロシアっぽい。

ねこ少年の雰囲気があまりねこっぽくないのが残念ですが、ねこが初めて自分の声を楽器として曲の中に使う曲「なぐりあうこどものためのファンファーレ」、めっちゃ聞いてみたい!
曲名のつけかた、かっこよすぎです。
他の曲も、全部かっこいいです。
オーケストラが目の前で演奏しているような迫力と、楽器の音色やテンポ、ねこがにゃーと鳴くタイミングまで見えるような気がします。

さりげない小物使いがおしゃれ。
ってファッションかいな!
と自分でつっこんでみたりしたんですが、実際本の中のものを集めて並べたら、なかなかかわいい雑貨屋さんができるんちゃうかなと思います。
スカンクのライターとか、用務員さんのスクラップブックとか、外国の切手カタログとか、ねー、なんか想像できるでしょー?

物語はラストにかけて、色んな秘密が明らかになっていきます。
ミステリーとかでよくあるような、秘密と秘密が繋がって事実が明らかになっていくっていうようなものじゃなくて、それを知らなくても差し支えないような、物語としては小さな、でも当人にとっては大きな秘密。
すてきな秘密もあれば悲しい秘密もあるけど、秘密を分けてもらうことで心があたたかくなってゆきます。
寒い国で、みんなでスープを飲んでいるようなあたたかさでした。
ほらやっぱりロシアっぽいわ。
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by sabazaki-jaco | 2009-05-15 00:51 | ほん